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『トゥルー・ディテクティブ』はクトゥルー神話か?

[!ネタバレしています。]

 テレビドラマ『トゥルー・ディテクティブ』は、ハードな作風の刑事ものでありながら、作中で“カルコサ”や“黄衣の王(イエロー・キング)”に言及され話題になった。
 しかし、これはクトゥルー神話なのか?
 とにかく、関連用語が出てくればそれはクトゥルー神話なのだ、という立場をとるならば『トゥルー・ディテクティブ』はじゅうぶんその資格がある。
 だが、作中で言及される用語が“カルコサ”と“黄衣の王”の二つのみであることを考えると、この作品をあえてクトゥルー神話と呼ぶのは、少しおかしい気もする。“カルコサ”はアンブローズ・ビアスの小説が初出で、ロバート・W・チェンバース(あるいはチェイムバーズ)の『黄衣の王』の中でも使われた。その『黄衣の王』が発表されたのは1895年。つまりいずれも、ラヴクラフト以前からの用語である。
 ならば、『黄衣の王』連作に属する作品と考えてはどうか。と言って、これもおかしい。『黄衣の王』連作は、奇妙な出来事を描いた短編それぞれの主人公が、どこかで戯曲の「黄衣の王」を手にしているというものだからだ。『トゥルー・ディテクティブ』では戯曲としての「黄衣の王」が登場するわけではなく、“イエロー・キング”とはオカルト儀式殺人を行っている犯人の信仰の対象である。その意味では、やはりクトゥルー神話化した“黄衣の王”のイメージなのかもしれない。
 もう一つ、直接、神話用語とは言えないが、このドラマでは「緑の耳のスパゲッティー怪物に追いかけられた」という被害者の証言が出てくる。クトゥルー神話的な雰囲気に加えて“スパゲッティーモンスター”とくれば、これは「ダンウィッチの怪」のような状況を連想させたいのではないか。とはいえ、このドラマでは、怪奇作品的な意味での本物の怪物が出てくるわけではない。あくまで刑事もののミステリー・ドラマなのだ。
 ドラマで、間違った答えに誘導することをミスリードとかミスディレクションと言ったりする。
 そこでこの『トゥルー・ディテクティブ』を正確に位置づけるなら、クトゥルー神話をミスディレクションに用いたミステリー・ドラマ、となるだろう。

 ところで、『トゥルー・ディテクティブ』以前に海外ミステリー・ドラマで“黄衣の王”をネタにした作品がある。何かわかるかな。それについては次回。