窓に! 窓へ! 窓が!

もう出たのはだいぶ前になるが、新潮文庫の〈クトゥルー神話傑作選〉『狂気の山脈にて』所収の「ダゴン」では、これまでの訳では「窓に! 窓に!」だった最後のフレーズが「窓へ! 窓へ!」になっている。 窓から逃げるのかな、と私は思っていたのだが、この…

文学フリマ東京35

文学フリマ東京35に出店します。bunfree.net ブースは【J‐15】、サークル名「地下石版」です。 今回持っていく本は、 クトゥルー神話短編二作『真夜中のアウトサイダー/ガロス=レー』(定価800円) 「真夜中のアウトサイダー」は、ポーの「赤き死の仮面」…

『ザ・ミソジニー』

高橋洋監督・脚本の映画『ザ・ミソジニー』を見た。 それでいろいろ考えたことがあるので書いておこうと思う。 まずわかりやすい解釈をかくと――、 この映画は、ある劇作家がテレビでたまたま見た怪奇映像を題材にして創作をしようとしている。 そのなかなか…

未知しるべ

8月13日に中野サンプラザで開催される「未知しるべ」というイベントに出店します。www.mandarake.co.jp サークル名「地下石版」です。 持っていくのは―― クトゥルー神話の小説同人誌が三種(700~800円)。 内容はこちらに → https://snake-o.hatenadiary.j…

『魂を喰らうもの』

ヘンリー・カットナーのクトゥルー神話作品集『魂を喰らうもの』(海野しぃる訳)を読んだので感想を書いてみる(ネタバレしています)。 この本は同人出版で、すぐ売り切れて買えない状態だったのだけど、何と文学フリマの盛林堂書房のブースで買えた! 文…

文学フリマ東京34

第34回文学フリマ東京に出店します。2022年5月29日開催。bunfree.net ブースは【ケ‐24】、サークル名「地下石版」です。 今回持っていく本は、『真夜中のアウトサイダー/ガロス=レー』(定価800円) 「真夜中のアウトサイダー」は、ポーの「赤き死の仮面」…

『グラーキの黙示』2

前回のつづきでラムジー・キャンベル『グラーキの黙示』第2巻の感想です。 (注:ネタバレしています!) まず「島にある石」から。これは1964年発表なので、ラヴクラフト模倣期の一巻に入れてもよかったはずだが、読んでみると二巻の文体実験期に位置付け…

『グラーキの黙示』1

ラムジー・キャンベル『グラーキの黙示』1,2巻を読んだ。 まずは第1巻、各話の感想を。 (注:ネタバレしています!) 尚、文中で《猟犬型》とか《神殿型》とかいう用語を使っていますが、これは私が考えたクトゥルー神話の六つの分類で、くわしくはカク…

ラヴクラフトとイドの怪物 ――あるいはクトゥルー神話のハムレットたち

ダニエル・ハラー監督がラヴクラフト原作を映画化した二作『襲い狂う呪い』『ダンウィッチの怪』がいずれもイドの怪物型のストーリーになっていた、ということを前回までで述べた。 だとすると、ラヴクラフト自身の作品におけるイドの怪物テーマはどうなって…

『ダンウィッチの怪』について

(ネタバレしています。) ダニエル・ハラー監督による、もう一つのラヴクラフト原作映画が『ダンウィッチの怪』。 怪しげな儀式が描かれたオープニングに続いて、ウイルバー・ウェイトリーが図書館ヘ『ネクロノミコン』の貸し出しを求めてやってくるところ…

『襲い狂う呪い』について

ダニエル・ハラー監督の『襲い狂う呪い』は主演がニック・アダムスだ。 このヘミングウェイの小説と同名の俳優は、東宝特撮映画『フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)』や『怪獣大戦争』にも出演している。 公開はどれも1965年で、当然、同じ顔。な…

『オカルト』について

今回はクトゥルー神話関連の日本映画では一番気に入っている『オカルト』について。 これは白石晃士監督作のフェイクドキュメンタリー。 『ほんとにあった!呪いのビデオ』『ノロイ』を経て、真面目にやってるんだけど笑える独特のノリがこの作品で完成の域…

『マウス・オブ・マッドネス』について

クトゥルー神話関連の映画について、好きな作品や気になることを書いていきたい。 もっとも私はホラー映画はどちらかというと苦手でスプラッターものなんかはあまり見ていない。まあ、見た範囲での話ということで。 まずは、ジョン・カーペンター監督の『マ…

文学フリマ東京33

2021年11月23日に開催される第三十三回文学フリマ東京に出店します。bunfree.netブースは【キー27】、サークル名「地下石版」です。 新刊はなし。 当日販売するのは、 クトゥルー神話関連ハードボイルド三作入り『何かが俺を呼んでいる/電気椅子奇譚/猫の…

『ネオノミコン』について

(ネタバレは一応の配慮はしていますが、いろいろ書いてるのでややバレ気味かもです。) アラン・ムーア作、ジェイセン・バロウズ画のネオノミコンを読んだ。 私は海外コミックには詳しくなくて、一時期メビウスの本を少し集めたぐらいなのだけれども、この…

文学フリマ東京32

2021年5月16日に開催されることになりました文学フリマ東京に出店します。 サークル名は「地下石版」、ブースは【カ‐21】です。bunfree.net で、新刊も出します。 『何かが俺を呼んでいる/電気椅子奇譚/猫の墓場』というクトゥルー神話関連の怪奇ハードボ…

迷宮刑事

一つ思いついたことがある。 「気まぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ」の作品に「人狼知能小説生成システム」というのがある。 人狼知能小説生成システム これは、カードゲームの人狼をAIにプレイさせてその内容を小説にするというもの。 たしかにこ…

『物語の体操』のカードを改造して使う

プログラムで小説を書く何かいい方法はないものか? 決まったパターンのヴァリエーションならば前々回書いた樹木型でつくれるが、それだと意外性に欠ける。 もっと、構造自体が動的に変化していくようなプログラムはつくれないだろうか。 大塚英志の『物語の…

カットアップ機械

今回も過去に作ったプログラムを紹介しようと思う。home.g06.itscom.net これはカットアップ機械というもので、ニュースサイトやウィキペディアからコピーしてきた文の断片をスクリプトに書き込んでおくと、ランダムに並べて出力する。長くなると読みずらい…

樹木型の文章自動生成

前回のこのブログで公開したプログラムは文章を自動生成するというもの。 それは、部分ごとにあらかじめ候補になる文を複数用意しておいて、ランダムにそれをつないでいくことで文章になる。 プログラムとしては難しいものではなくて、よく初心者向けのサン…

AIにクトゥルー神話を書かせることは可能か?

最近、AIに小説が書けるかということを考えている。 そのきっかけはこの記事――front-row.jp 自分もAIを使ってこんな文章を書かせることができたらと、そう思ったのである。 クトゥルー神話とかをね。 もちろんただの素人がAIなどを扱うのは難しいかも…

文学フリマ東京29

ワタクシ、第二十九回文学フリマ東京に出店します。 第二十九回文学フリマ東京【入場無料】 2019/11/24(日) 11:00〜17:00 ・会場: 東京流通センター ・詳細: https://bunfree.net/event/tokyo29/ 今回持っていく本は―― 既刊が、クトゥルー神話作品集『真夜中…

チラシ

5月6日の文学フリマ無事に終わりました。 ブースに足を運んでいただいた方ありがとうございました。 で、以下は前回(2018年11月)の文学フリマで配布したチラシです。 ミニゲームになっているので遊んでみてくださいね。 クトゥルー神話ミニアドベンチャ…

文学フリマ東京28

明日(2019/05/06)文学フリマ東京に出店します。 https://bunfree.net/event/tokyo28/#20190506 いつもはクトゥルー神話小説が専門の私ですが、今回は映画評論です。 脚本家・映画監督の大和屋竺についての研究本『暗殺のポルノ』というのを出します。 内容…

文学フリマ東京27

今月25日に開催される文学フリマ東京に出店します。 今回出すものは、クトゥルー神話作品集『真夜中のアウトサイダー/ガロス=レー』という本です。 内容はーー ポーの「赤き死の仮面」を原作としたオペラを構想中の作曲家からの依頼で、私立探偵が失踪した…

スピルバーグ・ユニバースのクトゥルー神話

あるセールスマンが出張のため車でハイウェイを走っていると、後ろからトレーラーにあおられ追突されそうになる。 必死で逃げるセールスマン。トレーラーは崖から転落し炎上する。 警察が残骸を調べると、その中から古代文字が刻まれた石版の欠片が出てくる…

マドニーマドニーで終わる話

『ユリイカ』2018年2月号は「クトゥルー神話の世界」だったわけだが、その中に久正人の「マドニー・マドニー」というマンガが載っていた。長さ2ページの箸休め的なものである。 内容は、江戸時代の読本作者らしき男が主人公で、ご隠居から「ラヴクラフトとい…

もう一つの「クトゥルーの呼び声」へ向かって

注:この文章は、前回2017年11月の文学フリマ東京の会場で配布したチラシのものです(多少改変してます)。 クトゥルー神話とは何か? それは、1920~30年代にパルプ雑誌に怪奇小説を発表していたH・P・ラヴクラフトが、文通などで交流のあった他の小説家と…

CTHULHUの呼び方

Cthulhuを何と読むか? 私は大概「クトゥルー」を使っている。 理由は、青心社文庫の《クトゥルー》で主な作品を読んだから、か。 あと、日本の小説家や研究者のほとんどがクトゥルーを使ってたということもある。 とは言え、結局のところは、架空の神なんだ…

アナグラム三題

その1 ある時ふとクトゥルー(Cthulhu)という名は、作者ラヴクラフト(Lovecraft)の姓のアナグラムではないか、という考えが浮かんだ。 ざっと思い浮かべるとCTLなどが含まれるので、何とかなりそうな気がするではないか。 で、実際やってみる……うーむ…