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ノンマルトの使者(クトゥルー神話風改変)

 以下の脚本モドキは、『ウルトラセブン』第42話「ノンマルトの使者」(脚本:金城哲夫 監督:満田かずほ)をベースに、『ウルトラマン』第20話「恐怖のルート87」(脚本:金城哲夫 監督:樋口祐三)の要素を加えてクトゥルー神話風に改変したものです。


■火虎浜近海
航行する貨物船エンマ丸。
海中から謎の発光現象。

船員 うわぁーっ
船長 な、何だ、あれは

エンマ丸、爆発炎上し沈んでいく。

ウルトラ警備隊作戦室
フルハシ隊員がヘルメットを脱ぎながら入ってくる。

フルハシ ダメです。怪獣が現れたような痕跡は何一つありませんでした
キリヤマ そうか。ご苦労
ソガ   本当に怪獣の仕業なのかなあ
アマギ  火虎浜近海の海難事故は今週に入ってこれで三件目だ。いずれも原因は不明
フルハシ 怪獣に決まってるよ。他に考えられないだろう

電話が鳴りキリヤマ隊長が受話器を取る。

キリヤマ ハイ……ウム……わかった(受話器を置く)今、海洋学研究所の江尻教授から火虎浜近海での船舶遭難について地球防衛軍に情報を提供したいとの連絡があった。ダン、アンヌ、海洋学研究所へ行って教授から話を聞いてきてくれ
ダンとアンヌ 了解

■火虎浜・海岸道路
走るポインター、速度を落とし止まる。
運転席のダン周囲を見回す。あたりに建物はない。

ダン  おかしいな。この辺のはずなんだが
アンヌ ちょっとダン、道を間違えたの
ダン  いや……あそこに人がいる。ちょっと聞いてくるよ

ダン海岸へ駆け下りて行く。網を直している漁師が見える。
車に残されたアンヌ、路上から子供に見られていることに気づく。

アンヌ あら、坊やこの辺の子
子供  海底開発をやめないと大変なことが起こるよ
アンヌ 坊や何を言ってるの
子供  海底は人間のものじゃないんだ
アンヌ 海底開発は人類の役に立つのよ
子供  海底を侵略したら大変なことが起こるからね
アンヌ 大変なことって

子供、海上へ目を向ける。遠くに航行するシーホース号が見える。
ダンが戻ってくる。

ダン  この道でいいんだ。まだ先らしい
アンヌ ねえダン、この子……

アンヌが振り返ると子供の姿は消えている。

アンヌ あら
ダン  どうしたんだい
アンヌ ここに子供がいたのよ。海底開発をやめないと大変なことになるって
ダン  海底開発を……

海洋学研究所
ポインターが研究所の敷地に入っていく。

■応接室
江尻教授がダン、アンヌと向き合って座わる。
ファイルから画用紙を取り出す。

教授  まずこの絵を見てください

クレヨンと水彩絵の具で描かれた怪獣の絵。すみに〈かいじゅうガイロス 3ねん1くみ いりやましんいち〉と子供の字で書かれている。

アンヌ 子供の絵ですね
教授  近所の小学校で生徒の絵の展覧会があって、そこで見かけたのです
ダン  で、この絵が何か
教授  そこに怪獣の名前が書いてあるでしょう
ダン  ええ、……ガイロス
教授  その名前が……(ファイルから書類を取り出す)これは小笠原のある島にだけ伝わる伝承なのですが、こうあります――ノンマルトの平和を乱してはならない/ノンマルトの平和を乱せばガイロスが怒る/ガイロスが怒れば地上に災いをもたらす
ダン  (内心の声)ノンマルト……あのノンマルトのことだろうか。ノンマルトとは地球人のことだ
教授  その島の言い伝えでは、ノンマルトとは海底にすむ種族で、人類が生まれる前から文明を持っていたそうです

教授がファイルを動かすと写真が一枚テーブルに落ちる。アンヌが手に取る。

教授  ああ、それはこの絵を描いた入山真市くんの写真です
アンヌ この子、さっき海岸で話しかけてきた子だわ
教授  いや、それはおかしい。その子は三年前に海の事故で亡くなったそうですよ

■作戦室
フルハシ、見ていたガイロスの絵をソガに渡す。

フルハシ 江尻教授はそんなことでウルトラ警備隊を呼び出したのか
ソガ   いいじゃないですか。他に手がかりもないんだし(絵をアマギに渡す)
フルハシ しかしねえ、子供の絵と小笠原の伝承と、出てくる名前が同じだからって、そんなものただの偶然に決まってるじゃないか
アンヌ  でも、あの近海ではシーホース号による海底探査が進められている。それがノンマルトの平和を乱すということなら、続発した海難事故はガイロスの怒り、ということになるんじゃないかしら
ソガ   フルハシ隊員もあの事故は怪獣の仕業という説でしたね
フルハシ そ、そうは言ったけど
アマギ  (絵を見ながら)ううむ、この形どこかで……そうだ!
ダン   アマギ隊員、何かわかったんですか
アマギ  (電話を取って)分析室か、今朝持ち込まれた例の彫像。あれを作戦室に持ってきてくれないか

防衛軍の隊員が金属製の彫像を持ってくる。その形は絵のガイロスとよく似ている。

アマギ  ほら、そっくりでしょう
ダン   確かに似ていますね
フルハシ そんなもの図鑑でも見て真似したんじゃないか
アマギ  いや、それはない。この彫像はシーホース号による前回の海底探査の際、海底の地下深くから発掘されたもので、世界中に似たものがないことは確認済みだ。その上、材質が未知の金属らしいということで防衛軍が分析を依頼されたものなんだ
ソガ   小笠原の伝承に海底から発見された彫像か。そうなるとこの絵、いよいよただ物じゃないな
アンヌ  隊長、私、この絵を描いた少年のこと、もう少し調べてみたいんです
キリヤマ うむ、いいだろう

■日虎浜小学校
校庭へ乗り入れるポインター
ダンとアンヌが降りて校舎へ。

■職員室
先生が引き出しを開けて書類を探している。

先生 (探しながら)あの子はねえ、泳ぎの上手い子でした。しかし台風が近づいて海が荒れている日に一人で泳ぎにいってしまって、そのまま……。死体も見つかりませんでした。おお、あった。

見つけた書類から住所をメモしてアンヌに渡す。

先生 ご家族はまだここに住んでるはずです

■入山家
母親の案内で真市の部屋へダンとアンヌが入ってくる。
壁に海底都市の絵と真市の遺影が飾られている。

  真市は、本当のうちの子ではないんです。ある時、赤ん坊だけを乗せたボートが砂浜に流れ着いたことがあって、調べてもどこから来たのかわからず、その子は孤児院に引き取られたんですが、うちには子供がなかったものですから養子として引き取ることにしました。手のかからない素直ないい子に育ちました。本当に不思議なほどわがままも言わず……、小学生になるとやたらと海に興味を持つようになって、友達も作らず一人で泳いだり海辺を歩いたり、そんなことばかりしていたんです。だから三年生になった真市が行方不明になった時も、あの子は海から来て海へ帰って行ったんだって、そう思っていたんです

■入山家前の路上
ポインターに乗りこむダンとアンヌ。

アンヌ 私が見たあの子、誰だったのかしら
ダン  もう一度江尻教授に会いたいな。彫像のことを話して意見を聞きたいんだ
アンヌ そう

ポインター走り出す。

■海岸道路
ポインター海洋学研究所へ近づいていく。
アンヌ、海岸の岩の上に子供が立っているのを見つける。
子供、岩の向こうへ飛び降りる。

アンヌ ダン、止めて。
ダン  (ブレーキを踏んで)どうしたんだい
アンヌ 岩の上に、あの子が立っていたのよ
ダン  いないじゃないか
アンヌ (車から降りながら)飛び降りたの。ちょっと見てくるわ

アンヌ、海岸へ走る。
ダンもポインターから降りる。
研究所の窓に不穏な閃光を目にする。
ダン、研究所へ走る。

■研究所内
書類棚に火がつき火事になっている。
倒れている江尻教授、胸のあたりが焼け焦げている。
ダン、助け起こそうとする。

ダン 教授、江尻教授、しっかりして下さい
教授 ノンマルト……ノンマルトが(教授死ぬ)

窓から海岸へ走る三体の海底人が見える。
ダン、ウルトラガンを向けるが撃つのをためらう

ダン (内心の声)あれがノンマルト……もしかれらが人間以前から地球にいる先住民だとしたら

海底人がダンに気づき光線銃を撃ってくる。
ダンも応戦する。
海底人の一人が肩に被弾しながらも海へ逃れる。

■岩場
アンヌ、子供が立っていた岩にたどり着く。
さらに先の岩の上に子供が立っている。波が打ち寄せてそれ以上近づけない。

アンヌ 真市くん、あなたは真市くんなの
子供  海底はノンマルトのものなのに人間は侵略しようとしている。だからガイロスがおこるよ
アンヌ ノンマルトのことを知っているの
子供  もうガイロスを止められないよ
アンヌ 真市くん、あなたは、あなたは

子供が海の方を指さす。
そこにシーホース号。海中から閃光。ガイロスが現れる。

■研究所付近
ダン (ビデオシーバーで)ダンより本部へ。怪獣が現れシーホース号を襲っています。あの絵と同じ、ガイロスです。

■作戦室
キリヤマ フルハシ、ソガはホーク一号で、アマギは私とハイドランジャーに、出動!

■海上
沈んでゆくシーホース号。
ガイロス、光線を吐きながら陸地へ向かう。

■研究所付近
ダン、ウルトラアイで変身しようとする。
目の前にいつの間にか子供が立っている。
ダン、建物の影へ移動し変身しようとする。
そこにも、まるで瞬間移動したかように子供がいる。
ダン、かまわず変身。

■浜辺
ガイロスと向き合うセブン。
飛来したホーク一号がガイロスを攻撃。
ガイロスの光線を受けたホーク一号は煙を吹きながら降下していく。
セブン、ガイロスと格闘。

■海中
海中を進むハイドランジャー。
前方にノンマルトの海底都市。

■ハイドランジャーのコクピット
キリヤマ あれはノンマルトの海底都市。かれらは本当に人類以前の先住民なのか……(首を振って)いや、そんな筈はない。攻撃だ!(ボタンを押す)

■海中
ハイドランジャーから連続発射される魚雷。
海底都市、壊滅する。

■海上
セブン手に持ったアイスラッガーでガイロスの片腕を切断。
ガイロス流血しつつ海中へ去る。

■ハイドランジャーのコクピット
キリヤマ (無線機を手に)みな喜べ、ノンマルトは滅びた。人類の勝利だ

■浜辺
セブン空へ飛び立つ

■砂浜
アンヌ、まるで生首のように砂から頭だけを出している。
背後に子供が立つ。

子供  ウルトラ警備隊のバカ。どうしてノンマルトを攻撃したんだ
アンヌ (体を起こして)あなた
子供  ノンマルトはまだ生きてるからね(駆け出す)
アンヌ 真市くん

アンヌ、後を追う。
ダンも現れ、その後を追う。

ダン 真市くん
アンヌ 真市くん、真市くん

子供、波にのまれる。するとその姿は同じ身長の海底人になっている。
再度波をかぶるともう姿は消えている。
立ち尽くすダンとアンヌ。



(反省点:これだと正味20分としても展開が足りないかも。まあ、要点だけ書いたということで。怪獣の名はヒドラにしたかったが、そうすると絵と伝承の名前の一致がギリシア神話からとったと考えねばならなくなるので断念。ヒドラの名は地名に使った。思ったほどクトゥルー神話っぽくはならなかった気もする。より神話度を上げるなら江尻教授の説明で無理やり神話用語を頻出させるのと、あとはハイドランジャーでのキリヤマ隊長にも幻覚などで神話世界に触れさせるとか)