マドニーマドニーで終わる話

 『ユリイカ』2018年2月号は「クトゥルー神話の世界」だったわけだが、その中に久正人の「マドニー・マドニー」というマンガが載っていた。長さ2ページの箸休め的なものである。
 内容は、江戸時代の読本作者らしき男が主人公で、ご隠居から「ラヴクラフトというメリケンの物書きの本」の話を聞き、最後に「マドニーマドニー」とつければどんな話にでもオチがつけられると思い込む。そして、大量の本を出版し、破滅するといったもの。

 この男の失敗の原因は、言うまでもなく、話の脈絡というものを考えずに、無理矢理に「マドニーマドニー」というフレーズを繋げてしまったことにある。
 しかし、では、どんな内容の話であれば「マドニーマドニー」、つまり「窓に! 窓に!」というフレーズで終わることができるのか、それを考えてみたい。

 「窓に!」で終わるということは、窓越しに何か恐ろしいものが見え、語り手はその何かに襲われるという暗示であると考えられる。襲われることが予測されるということは、語り手はその何かに追われていたのだろう。
 つまり、主人公が恐ろしい何者かに追われ、一時的に安全な場所へ逃げのびたが、窓から外を見ると、そこに恐ろしいものが迫ってきていた、といった話である。ちょっとしたサスペンスものならこれで成立する。例えば、ピエロメイクの殺人鬼に意味もなく追われるとか。
 では、これをクトゥルー神話にするにはどうするか。
 主人公が追われる理由を、旧支配者の秘密を知ってしまったから、というふうにすればよい。
 「ダゴン」の主人公の場合は、海底から隆起した島に上陸したことでそれを知ったのである。
 そして、その秘密を知るまでの紆余曲折を長めにすれば「クトゥルーの呼び声」のようになるし、主人公のモデルを友人の作家にすれば「闇にさまようもの」のようになる。